f:id:poponyan2525529:20180809215829j:image大阪人の母は

先の対戦が ちょうど 青春時代

さぞ 辛い毎日と思いきや

その頃の写真があり

「戦争中に写真なんて撮ってていいの」

驚く私に 

「きれいでしょう」

なんて 自慢げに 洋服の説明をする

白っぽい タイトスーツ、襟がピンと張った 仕立ての良いものだ

椅子に斜にかまえ 凛とした女性の写真は

まるで 女優のプロマイドだ

写真は魂を抜かれる なんて 昔の人は言うが

年代物の写真におさまっている人は 誰もが

本当に魂が どこか 離れているよう 

妙に高尚だ

 今のように バンバン写メを撮りまくるのと違い

一生ものの 一枚という 意識の あらわれだろうか

それとも 本当に一瞬魂がぬけるのだりうか

  

そんな母の家は

お妾さん用の家を貸す賃貸屋さん

二号さん専門の大家さんである

万事小作りな 瀟洒な 家をいくつか貸していた

大人しく 器用であった祖父は

簡単な大工道具を手に 集金に出向いたようで

ちょっとした家の不具合を 直して回ったようだ

そこに 母は ちょくちょく同行した 

そのため

やけに玄人女性に詳しい

 

旦那さんが来る前には

髪結いさんのところに行き

身綺麗にお着替えをする

お香の香りでふわりと家を包み

玄関先に 漏れた香りが ひっそりと お迎え役を果たす

 好みの菓子に 好みの料理

旦那様だけのための 特別な空間

部屋のしつらえも 華奢に洒落ている

日々の生活の匂いを消した

はんなりとした 非日常

これが お迎えの スタイルらしい

 

「本妻さんには あんなことは できない」

そう口にする母は この田舎の住まいでも 

父に対して 似た接し方をしていたように思う

そして 村人にも

母の 接客のスタイルは どこか特別だった

忍びの里の男性陣も 

荒れた山寺に 

どこかしら 甘やかで優美な風を見たのだろうと思う